他動詞の中には、目的格補語に不定詞を取って<SVO+C(不定詞)>というかたちの[[第5文型]]を作るものがある。 Cに入る不定詞の種類はVの動詞によって異なる。また、能動態と受動態でCに入る不定詞の種類が異なる動詞もあるため注意が必要である。 #contents *SVO+C(to不定詞) [#y626bff0] **SVO+to be C [#h8179bac] -We thought him ''(to be)'' '''responsible'''.[SVOC] -We thought him ''(to be)'' ''responsible''.[SVOC] --私たちは彼を責任感の強い人だと思っていた。 ---be動詞を元に作られた不定詞to beが、形容詞responsibleを補語に取っている。 ---that節を用いて、We thought that he was responsible.[SVO]と書き換え可能。 to beを省略できるかどうかは動詞によって異なるが、厳密な区別はないとされる。 ***<SVO+to be C>の、to beを省略できる主な動詞 [#g6010473] -assume:Oを~と考える -believe:Oを~と思う -consider:Oを~と考える -find:Oが~とわかる -suppose:Oを~と思う -think:Oを~と思う ***<SVO+to be C>の、to beを省略しない主な動詞 [#vc6bb356] -assert:Oを~と断言する -conclude:Oを~と断定する -discover:Oが~と気づく -guess:Oを~と推測する -know:Oが~と知っている -recognize:Oが~と認める **SVO+to do [#v8bce428] 一般動詞を元に作られたto不定詞を目的格補語の場所に置いて[[第5文型]](SVOC)を作ることができる。日本語訳のパターンは、「Sは、OがCすること(Cになること)をV」となることが多い。 ***一般的な<SVO+to不定詞> [#h82c76e9] [[第5文型]](SVOC)では、Cの意味上の主語はOになる。<SVO+to不定詞>でも同様に、to不定詞で表される動作や状態の意味上の主語はOになる。 -My teacher always tells '''me''' ''to study English everyday''. -My teacher always tells ''me'' ''to study English everyday''. --先生は、私に毎日英語を勉強するようにといつも言う。 ---「毎日英語を勉強する」(C)のは「私」(O)である。 [[受動態>Mt. English Grammar/11. 態]]に書き換えると[[第2文型]](SVC)になり、Cの意味上の主語はSになる。 -'''I''' am always told ''to study English everyday'' by my teacher.[SVC] -''I'' am always told ''to study English everyday'' by my teacher.[SVC] --私は、毎日英語を勉強するようにと先生にいつも言われる。 ---「毎日英語を勉強する」(C)のは「私」(S)である。 tellは、Oをthat節の主語にして、''<S tell O1+that節(O2)>''に書き換えることができる。 -My teacher always tells '''me''' ''that I should study English everyday''.[SVO1O2] -My teacher always tells ''me'' ''that I should study English everyday''.[SVO1O2] --先生は、毎日英語を勉強すべきだといつも私に言う。 #region(<SVO+to不定詞>の形を取る主な動詞) -advise*:Oに~するよう忠告する -allow:Oが~することを許す -cause:OがCする原因になる -compel:Oに~するよう強いる -enable:Oが~できるようにする -encourage:Oが~するよう励ます -expect**:Oが~すると期待する -force:Oに~するよう強いる -need:Oに~してもらう必要がある -order**:Oに~するよう命令する -permit:Oが~するのを許可する -require**:Oに~するよう求める -teach*:Oに~することを教える -tell*:Oに~せよと命じる -think**:Oを~と思う -want:Oに~してほしいと思う -warn*:Oに~するよう警告する --*印は、Oをthat節の主語にして、<SVO+that節>に書き換えることができる。 --**印は、Oをthat節の主語にして、<SV+that節>に書き換えることができる。 #endregion Oとto不定詞のあいだに受動の関係が成り立つときは、to不定詞を受動態にする。 -I want '''these suitcases''' ''(to be) carried'' upstairs. -I want ''these suitcases'' ''(to be) carried'' upstairs. --これらのスーツケースを2階に運んでもらいたい。 ---to beは通例省略されて過去分詞だけが残る。 [[There構文]]は<There+V+S>という特殊な構造を持つので、there構文を<SVO+to不定詞>で表す場合、thereを名詞に見立てて''<SV there to be+S’>''の形で表す。 -I don't want ''there to be another war''. --私は、また戦争が起こることを望まない。 ***注意すべき<SVO+to不定詞>:promiseとhelp [#ec2b557d] 他動詞promiseの場合に限り、to不定詞の意味上の主語がOにならず、Sになるので注意が必要である。 -Susan promised me ''to come'' back here by seven. --スーザンは7時までにここに戻ってくると私に約束した。 ---「7時までにここに戻ってくる」のは「私」(O)ではなく「スーザン」(S)。 ---「スーザンは私に7時までにここに戻るという約束を与えた」と考えて、[[第4文型]](SVO1O2)と解釈する考え方もある。 現代英語では、上記のような混乱を避けるためthat節を用いて第3文型(SVO)か第4文型(SVO1O2)で表すのが普通とされる。 --Susan promised '''(me)''' ''that she would come back here by seven''. --Susan promised ''(me)'' ''that she would come back here by seven''. また、他動詞helpは、Cに原形不定詞とto不定詞の両方を取れる。 -My brother helped me ''(to) repair'' my bike. --兄は、私が自転車を修理するのを手伝ってくれた。 ---原形不定詞の場合は直接的な助けを意味し、to不定詞の場合は結果として助けになるという解釈もあるが、実際にはあまり区別せず用いられる。 ***<SVO+to不定詞>が取れそうで取れないhope [#n1a094a6] 他動詞hopeは、<SVO+to不定詞>の形を取って、<S hope O to不定詞>と書けそうだが、実際には書けない。<SVO+for 意味上の主語+to不定詞>とする必要がある。 -○ I hope '''for you''' ''to do'' your best. -○ I hope ''for you'' ''to do'' your best. -× I hope you to do your best. --君には最善を尽くしてもらいたい。 hopeは、<for 意味上の主語>をthat節の主語にして、<S hope that節>に書き換えることができる。 -I hope ''that you will do your best''.[SVO] *SVO+C(原形不定詞) [#xfcc1ec0] [[第5文型]](SVOC)において、Vに''知覚動詞''([[get以外:http://mep.papiko.com/index.php?SVO%EF%BC%8BC%EF%BC%88%E4%B8%8D%E5%AE%9A%E8%A9%9E%EF%BC%89#eb610a55]])や''使役動詞''などが置かれると、Cはto不定詞にならず''原形不定詞''になる。 **<S+V(知覚動詞)+O+C(原形不定詞)>の用法 [#lbe1e3e1] 知覚動詞とは、身体的知覚を意味する動詞で、「見る」(see / watch)「聞く」(hear)「感じる」(feel)などに代表される。 -I '''heard''' Bob ''play'' the violin.[SVOC] -I ''heard'' Bob ''play'' the violin.[SVOC] --私は、ボブがバイオリンを弾くのを聞いた。 ---他動詞playを元に作られた原形不定詞play(~を演奏すること)が目的語the violinを取っている。 ---現在分詞を用いてplaying the violinとも書ける。原形不定詞が「一部始終を聞いた」を表すのに対して、現在分詞では「一部を聞いた」というニュアンスになる。詳しくは[[SVO+C(分詞):http://mep.papiko.com/index.php?%E5%88%86%E8%A9%9E%E3%81%AE%E5%8F%99%E8%BF%B0%E7%94%A8%E6%B3%95#fa3a857c]]を参照。 ただし、受動態にするときは原形不定詞をto不定詞に書き直す必要がある。 -Bob '''was heard''' ''to play'' the violin by me.[SVC] -Bob ''was heard'' ''to play'' the violin by me.[SVC] --ボブは、バイオリンを弾いているのを私に聞かれた。 アメリカ英語では、本来は<自動詞+前置詞>であるlisten toやlook atを一つの他動詞として捉えて知覚動詞として[[句動詞]]的に扱い、<SVO+原形不定詞>の形を作ることがある。 -I '''listened to''' Bob ''play'' the violin. -I ''listened to'' Bob ''play'' the violin. --私は、ボブがバイオリンを弾くのを聞いた。 このようなSVOCから受動態が作られることは無い。 **<S+V(使役動詞)+O+C(原形不定詞)>の用法 [#nc9eb9c2] 使役動詞とは、「OにCさせる」を表す他動詞を指し、make / have / letなどに代表される。 ***make:Oに無理やりCさせる [#l538f55f] 使役動詞makeは、Oの意志に関わらず無理やり何かをさせるという''強制''の意味を持つ。 -Father '''made''' me ''go'' to a swimming class. -Father ''made'' me ''go'' to a swimming class. --父は私を無理やり水泳教室に行かせた。 受動態にすると原形不定詞をto不定詞に書き直す必要がある。 -I '''was made''' ''to go'' to a swimming class by Father. -I ''was made'' ''to go'' to a swimming class by Father. --私は、父に無理やり水泳教室に行かされた。 ***let:OがCすることを許す/OをCのままにしておく [#y402856a] 使役動詞letは、Oに自由に何かをさせるという''許可''の意味を持つ。 -Kenny '''let''' me ''use'' his car. -Kenny ''let'' me ''use'' his car. --ケニーは僕に車を使わせてくれた。 ---letの活用形は、let-let-letである。 letを用いた受動態は作れないので、allowやpermitなど許可を表す他の他動詞で代用する。その際、原形不定詞はto不定詞に書き換える必要がある。 -I '''was allowed''' ''to use'' his car by Kenny. -I ''was allowed'' ''to use'' his car by Kenny. --僕は、ケニーに車を使わせてもらった。 letは命令文で、次のように用いられることも多い。 -'''Let''' me ''introduce'' you to Mr. Davis. -''Let'' me ''introduce'' you to Mr. Davis. --デービスさんをご紹介いたしましょう。 -'''Let''' it ''be''. -''Let'' it ''be''. --なるがままにさせておこう。 ---この例文は、イギリスのロックバンド・The Beatlesの最後のアルバムの名前でもある。同名のシングル楽曲は全米第1位のヒットを記録した。 -'''Let''' this ''be'' a lesson to you. -''Let'' this ''be'' a lesson to you. --このことを教訓にするんですよ。 勧誘を意味する命令文<Let’s 動詞原形>のLet’sは、<Let+us>の縮約形である。 -''Let's'' (= ''Let'' us) take a walk. --散歩に行こう。 ***have:OにCを(当然のこととして)させる/してもらう [#c3e0d480] 使役動詞haveは、当然のこととしてOにCをしてもらうという''合意''の意味を持つ。 -I '''had''' a mechanic ''check'' the engine. -I ''had'' a mechanic ''check'' the engine. --私は、修理工にエンジンを点検してもらった。 haveそのものは受動態にならないが、OとCの間に受動関係が成り立てば、Cに過去分詞を置く。[[haveを用いた受動の意味を表す表現:http://mep.papiko.com/index.php?SVOC%E3%81%AE%E5%8F%97%E5%8B%95%E6%85%8B#j1a1f07c]]も参照のこと。 -I '''had''' the engine ''checked'' by a mechanic. -I ''had'' the engine ''checked'' by a mechanic. --私はエンジンを修理工にチェックしてもらった。 ---<have+O+過去分詞>は、「OをCしてもらう」(使役)や「OをCされる」(被害)と訳せる。 ***get:OにCさせる/してもらう [#eb610a55] 使役動詞の中で、getだけはCにto不定詞を取るので注意が必要である。getは、''努力を伴う使役''を意味する。 -I '''got''' my husband ''to quit'' smoking. -I ''got'' my husband ''to quit'' smoking. --私は夫に喫煙を(説得などして)やめさせました。 getそのものは受動態にならないが、OとCの間に受動関係が成り立てば、Cに過去分詞を置く。 -I'll '''get''' this work ''done'' by noon. -I'll ''get'' this work ''done'' by noon. --私は正午までにこの仕事を終えてしまうつもりだ。 *[FYI] <SVO+(to)不定詞>に関する主要参考書の見解 [#f393af2a] <SVO+(to)不定詞>を、Mt. English Grammarでは一貫して第5文型(SVOC)として扱っているが、英文法参考書によっては異なる見方をしているものもある。 たとえば『新訂増補マスター英文法』(中原道喜・聖文新社)では当サイトと同じくこの構造をSVOCとして扱っている。 『ロイヤル英文法』(綿貫陽他・旺文社)の場合、初版ではこの文構造をSVOCとして扱っていたが、改訂新版では「いろいろな見方があるので、特別な構文として扱う」という表記に変更している。 また、『英文法解説』(江川泰一郎・金子書房)では、promiseのような例外を含むなどの理由からこの文構造を「5文型の学習文法の枠内で処理することは不可能」としている。さらに、この文構造では動詞の目的語をOだけでなく<O+不定詞>として見るべきだという見解に立っている。 変形文法の観点を取り入れた『英文法総覧』(安井稔・開拓社)は、5文型による英文の分類にそもそも消極的である。<SVO+(to)不定詞>については、他動詞の中には<目的語+to不定詞>の構造を従えるものもあるという解説に留めている。 さらに、『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)では、第2版までは<S+tell+O+to不定詞>などを第4文型として扱っていたが、現在(第3版以降)では文型分類を行っていない。 英文構造をどのように解釈するかというのは、極論すれば解説者の思想の表明であり、どれが正しい(あるいは間違っている)と断言できるものではない。当サイトの見解は、上記に挙げた解説書の中では『マスター英文法』に最も近いと言えるだろう。