能動態(Active Voice)が「~する」という意味を表すのに対して、受動態(Passive Voice)は「~される」という意味を表す。注意したいのは、能動態と受動態は同じ現象を異なる視点から述べているという点である。

受動態の基礎 [edit]

  • Lisa punched Bart.
    • リサはバートを殴った。[能動態]

上の文では、リサという少女がバートという少年を殴ったという現象が述べられている。言い換えると、リサがバートに対して「殴る」という行為を「した」のである。このように、能動態は行為を行った側(動作主=Lisa)の視点から現象を述べるのである。

この英文を、今度は受動態に書き換えてみると、次のようになる。

  • Bart was punched by Lisa.
    • バートはリサに殴られた。[受動態]

上の文では、バートがリサに殴られたという現象が述べられている。言い換えると、バートがリサによって「殴る」という行為を「された」のである。このように、受動態は行為を受けた側(被動作主=Bart)の視点から現象を述べるのである。

受動態の構造 [edit]

「リサはバートを殴った」という能動態の文を文型分類すると次のようになる。

  • SLisa Vpunched OBart.[能動態:SVO]
    • 動作主=主語=Lisa
    • 被動作主=目的語=Bart

この文を受動態に書き換えるには、被動作主(=目的語)のBartを主語の場所に置き、動詞部分を<be+過去分詞>(~される)のかたちにする。このbeは助動詞で、受動態の時制はbeを活用することで表す。今回は過去時制の文なので、beをwasに書き換える。動作主(=主語)のLisaは前置詞byの後ろに置かれ、「~によって」を意味する副詞句となる。この結果、SVOの能動態はSVの受動態に書き換わることがわかる。

  • SBart Vwas punched <by Lisa>.[受動態:SV]

受動態は、能動態の目的語(=被動作主)を主語に置いて、被動作主の視点から現象を述べる。言い換えれば、能動態に目的語が存在しなければ原則として受動態は作れないということになる。つまり、受動態を作るには、能動態の文型が少なくとも第3文型(SVO)である必要があり、SVOから受動態を作ると必ずSVの文型になるのである。

助動詞を用いた受動態 [edit]

能動態に助動詞が使われている場合は、受動態では<助動詞+be+過去分詞>にする。

  • The students must finish this project by next Tuesday.
  • This project must be finished by the students by next Tuesday.
    • 学生たちは、このプロジェクトを来週の火曜日までに終えなければならない。
      • by next Tuesdayのbyは、期限(~までに)を表すby。

進行形を用いた受動態 [edit]

能動態が進行形の場合は、受動態では<be+being+過去分詞>にする。

  • The police are hunting him.
  • He is being hunted by the police.
    • 彼は警察に追われている。
      • the policeは集合名詞で複数扱い。

[FYI] 受動態を作れる条件 [edit]

能動態がSVOであれば必ず受動態が作れるわけではない。一般的に、能動態から受動態を作るには、動作主(主語)が被動作主(目的語)に対して動作(動詞)を通じて何らかの影響や作用を与えているという条件を満たす必要がある。

  • Lisa has brown hair.
    • リサは茶色い髪をしている。

上の英文の文型はSVOだが、動作主(Lisa)が被動作主(brown hair)に対して動作(has)を通じて働きかけている感じが乏しいため、受動態にすることはできない。

  • × Brown hair is had by Lisa.

haveの他にも、approach / become(~に似合う) / cost / enter / reach / resembleなどは一般的に受動態を作らない他動詞である。

ただし、上記の動詞でも、動詞によって表される行為によって被動作主が何らかの働きかけを受けていることが強調されているような場合、受動態を作ることがある。次の2文はどちらもapproachを使ったものだが、一方は不自然な文、もう一方は自然な文となる。

  • a. × I was approached by the train.
    • 私は列車に近づかれた。=列車が私に近づいた。
  • b. ○ I was approached by the stranger.
    • 私は見知らぬ人に近づかれた。=見知らぬ人が私に近づいた。

a.の場合、列車(動作主)は私(被動作主)を意図的に目指して接近するわけではなく、この意味で被動作主は動作主によって働きかけを受けているとは言えない。b.の場合は、見知らぬ人(動作主)は私(被動作主)を目指して接近しており、被動作主が動作の影響を直接的に受けていると言えるので自然な文となるのである。

また、自動詞を使った能動態の文からは受動態の文を作ることができないというのが一応のお約束である。しかし、<主語+自動詞+前置詞+名詞>の構造において、前置詞の目的語の名詞が主語によって強い特徴づけを受ける場合は、前置詞の目的語を主語にした自動詞の受動態を作ることができるのである。

  • Mike slept in this bed.
  • c. × This bed was slept in by Mike.
    • このベッドはマイクが寝た。
  • Shakespeare slept in this bed.
  • d. ○ This bed was slept in by Shakespeare.
    • このベッドはシェイクスピアが寝た。

c.の場合、能動態の主語であるマイクという男はまったく無名な存在であり、ベッドを特別な存在として特徴づけるには弱いので、ベッドを主語にした受動態は作れない。しかしd.の場合、能動態の主語はイギリスの大文豪・シェイクスピアである。マイクが眠ったベッドにはほとんど価値はないだろうが、世界的に名の知れたシェイクスピアの使ったベッドとなれば話は別である。シェイクスピアのベッドはきっと博物館などに保存されることだろう。このように、ベッドが特別な存在として特徴づけられる場合、ベッドを主語にした受動態が自然な文となるのである。このような受動態は擬似受身文とも呼ばれる。

受動態を作る条件については、久野・高見(2005)が詳しい解説を試みている。