to不定詞を形容詞的に用いることを、to不定詞の形容詞用法と呼ぶ。形容詞には、名詞を修飾する''限定用法''と補語(C)になる''叙述用法''とがあり、to不定詞の形容詞用法もこれに準じる。 #contents *限定用法 [#p9cf6efe] to不定詞を用いて名詞を修飾するとき、その修飾パターンは以下の5つに分類される。 **修飾される名詞がto不定詞内の他動詞の目的語になる [#l1b01b56] -I want '''something''' ''to drink''. --何か飲み物がほしい。 ---他動詞drinkをもとに作られた不定詞to drinkの目的語は、修飾される名詞something。 -He has no '''family''' ''to love''. --彼には愛すべき家族がいない。 ---他動詞loveをもとに作られた不定詞to loveの目的語は、修飾される名詞family。 -Probably he has '''something''' ''to do'' with the murder. --おそらく彼はその殺人事件に何らかの関係がある。 ---他動詞doをもとに作られた不定詞to doの目的語は、修飾される名詞something。 ---somethingを省略して、has to do withとも書ける。 **修飾される名詞がto不定詞内の前置詞の目的語になる [#m587b39f] -Lucy is looking for an '''apartment''' ''to live in''. --ルーシーは、住むためのアパートを探している。 ---自動詞liveをもとに作られた不定詞to live内に、場所を表す前置詞inを置き、修飾される名詞apartmentが前置詞inの目的語になっている。 ---関係代名詞を用いたLucy is looking for an apartment in which to live.という言い方もあるが、形式的な表現。 -Would you give me '''something''' ''to write'' with? --何か書くもの(鉛筆など)をくれませんか? ---自動詞writeをもとに作られた不定詞to write内に、手段を表す前置詞withを置き、修飾される名詞somethingが前置詞withの目的語になっている。 ---Would you give me something to write down?(何か書くもの<紙など>をくれませんか?)と区別せよ。 -I have enough '''money''' ''to buy'' the car (with), but no '''place''' ''to put'' it (in). --その車を買うのに十分なお金は持っているが、置く場所がない。 ---他動詞buyをもとに作られた不定詞to buyが、目的語the carを取っている。さらに、不定詞句内に手段を表す前置詞withを置き、修飾される名詞moneyが前置詞withの目的語になっている。ただし、moneyを修飾する不定詞内でwithはしばしば省略される。また、接続詞butの後ろでは、他動詞putをもとに作られた不定詞to putが目的語it (= the car)を取っている。さらに、不定詞句内に場所を表す前置詞inを置き、修飾される名詞placeが前置詞inの目的語になっている。ただし、placeを修飾する不定詞内でinはしばしば省略される。 **修飾される名詞とto不定詞内の動詞のあいだにSV関係が成り立つ [#ae121e15] 関係代名詞節に書きなおせるものが多い。関係代名詞については、関係詞の単元で詳しく扱う。 -He has no '''family''' ''to love'' him. -= He has no family who love him. --彼には、彼を愛してくれる家族がいない。 ---他動詞loveをもとに作られた不定詞to loveが、目的語himを取っている。修飾される名詞familyと不定詞句のあいだにSV関係が成り立っている。 -Lisa is the last '''person''' ''to be'' late for school. -= Lisa is the last person who is late for school. --リサは決して学校に遅刻したりしない。 ---be動詞をもとに作られた不定詞to beが、補語lateを取っている。修飾される名詞personと不定詞句のあいだにSV関係が成り立っている。 ---形容詞lastは、「最も~しそうにない」の意。 -The mind is not a '''vessel''' ''to be filled'', but a '''fire''' ''to be kindled''. -= The mind is not a vessel which should be filled, but a fire which should be kindled. --知性とは、満たすべき器ではなく、燃やすべき炎である。 ---修飾される名詞とto不定詞のあいだをb.の関係(修飾される名詞がto不定詞内の前置詞の目的語になる)にして、a vessel to fill / a fire to kindleとも書ける。 ---古代ローマの思想家・プルタルコス(Plutarch)の言葉。 **to不定詞を関係副詞節に書き換えることができる [#c7f19b30] -timeやwayなどの名詞を修飾するto不定詞は、関係副詞節に書き換えることができる。 --It's '''time''' ''to go'' to school now. --= It's time you went to school now. --もう学校に行く時間ですよ。 -This is the only '''way''' ''to cure'' the disease. -= This is the only way you can cure the disease. --これは、その病気を治療する唯一の方法だ。 **不定詞が修飾される語の内容を補足的に説明する [#qa321ba0] -My parents gave me the '''opportunity''' ''to study'' abroad. --両親は私に留学する機会を与えてくれた。 -You have the '''right''' ''to remain'' silent. --あなたには黙秘する権利があります。 ---アメリカでは、拘束した被疑者に取調べを行うにあたり、事前に被疑者の持つ権利を法執行官(警官や刑事など)が読み上げる。これはミランダ警告(Miranda warning)と呼ばれ、例文(黙秘権について)はその最初の項目である。 これらの例文では、修飾される名詞とto不定詞のあいだに同格関係が成立しているとも考えられる。その場合、to不定詞の用法は名詞用法となるが、どちらが正しい(あるいは間違っている)かを議論することは無益である。to不定詞の中には名詞用法/形容詞用法/副詞用法のどれかに厳密に分類することが難しいものがあり、この用法もそれにあたる。 *叙述用法 [#mf1b4e0d] to不定詞が不完全自動詞の補語として働く用法を叙述用法と呼ぶ。ただし、固定した表現がほとんどであり、この分類そのものにあまり意味は無い。<動詞+to不定詞>全体で助動詞的に働くと考えてもよい。 **seem / appear to~:~のように思われる [#vca592db] -He '''seems''' ''(to be)'' sick. -= It seems that he is sick. --彼は具合が悪そうだ。 I cannot '''seem''' ''to find'' any solution to this error. --僕にはこのエラーの解決策を見つけられそうにない。 **happen / chance to~:偶然~する [#x4e1d9bd] -I '''happen''' ''to be'' free today. -= It happens that I'm free today. --僕は今日たまたま暇なんだ。 -There '''happened''' ''to be'' my old friend in our rival firm. --ライバル社にたまたま僕の旧友がいた。 ---[[There構文]]なので文の主語はmy old friendになる。 -Cathy '''chanced''' ''to meet'' her ex-husband on the street. --キャシーは街で図らずも前夫に出会った。 ---chanceは文語的とされ、普通はhappenを用いる。 **prove / turn out (to be) C:結果的にCであることがわかる [#m91795f9] -Reiko '''proved''' ''to be'' the right person for the job. --レイコはその仕事に適任の人だとわかった。 -The experiment '''turned out''' ''(to be)'' successful. --その実験は成功した。 ---to不定詞内のCが形容詞のときはto beを省略できる。Cが名詞のときは省略しないのが普通とされる。 **come (learn) / get to~:~するようになる [#r481b198] to不定詞には主に状態動詞が用いられる。 -I recently '''came''' ''to know'' her husband. --私は最近になって彼女の夫を知った。 ---getを用いてgot to knowとするのは口語的。became to knowは誤り。 -Most Japanese '''learn''' ''to read'' and ''write'' in elementary school. --ほとんどの日本人は小学校で読み書きができるようになる。 ---このlearnは他動詞で、「努力して~できるようになる」の意。 **その他 [#vf54a4d4] ***remain to~:まだ~されずにいる/これから~されねばならない [#g65567e3] -It '''remains''' ''to be seen'' if our plan will be successful. --我々の計画が成功するかどうか、まだわからない。 ---この表現ではto不定詞内は受動態になることが多い。 ***tend to~:~する傾向にある [#x7ee915c] -Overwork '''tends''' ''to lead'' to sudden death. --働きすぎは突然死に繋がりやすい。