to不定詞を形容詞的に用いることを、to不定詞の形容詞用法と呼ぶ。形容詞には、名詞を修飾する限定用法と補語(C)になる叙述用法とがあり、to不定詞の形容詞用法もこれに準じる。
限定用法 †
to不定詞を用いて名詞を修飾するとき、その修飾パターンは以下の5つに分類される。
修飾される名詞がto不定詞内の他動詞の目的語になる †
- I want something to drink.
- 何か飲み物がほしい。
- 他動詞drinkをもとに作られた不定詞to drinkの目的語は、修飾される名詞something。
- He has no family to love.
- 彼には愛すべき家族がいない。
- 他動詞loveをもとに作られた不定詞to loveの目的語は、修飾される名詞family。
- Probably he has something to do with the murder.
- おそらく彼はその殺人事件に何らかの関係がある。
- 他動詞doをもとに作られた不定詞to doの目的語は、修飾される名詞something。
- somethingを省略して、has to do withとも書ける。
修飾される名詞がto不定詞内の前置詞の目的語になる †
- Lucy is looking for an apartment to live in.
- ルーシーは、住むためのアパートを探している。
- 自動詞liveをもとに作られた不定詞to live内に、場所を表す前置詞inを置き、修飾される名詞apartmentが前置詞inの目的語になっている。
- 関係代名詞を用いたLucy is looking for an apartment in which to live.という言い方もあるが、形式的な表現。
- Would you give me something to write with?
- 何か書くもの(鉛筆など)をくれませんか?
- 自動詞writeをもとに作られた不定詞to write内に、手段を表す前置詞withを置き、修飾される名詞somethingが前置詞withの目的語になっている。
- Would you give me something to write down?(何か書くもの<紙など>をくれませんか?)と区別せよ。
- I have enough money to buy the car (with), but no place to put it (in).
- その車を買うのに十分なお金は持っているが、置く場所がない。
- 他動詞buyをもとに作られた不定詞to buyが、目的語the carを取っている。さらに、不定詞句内に手段を表す前置詞withを置き、修飾される名詞moneyが前置詞withの目的語になっている。ただし、moneyを修飾する不定詞内でwithはしばしば省略される。また、接続詞butの後ろでは、他動詞putをもとに作られた不定詞to putが目的語it (= the car)を取っている。さらに、不定詞句内に場所を表す前置詞inを置き、修飾される名詞placeが前置詞inの目的語になっている。ただし、placeを修飾する不定詞内でinはしばしば省略される。
次のように、修飾される名詞がto不定詞内の前置詞の目的語であり、かつ、動詞の目的語になることもある。
- Every child needs someone to look up to and copy.
修飾される名詞とto不定詞内の動詞のあいだにSV関係が成り立つ †
関係代名詞節に書きなおせるものが多い。関係代名詞については、関係詞の単元で詳しく扱う。
- He has no family to love him.
- = He has no family who love him.
- 彼には、彼を愛してくれる家族がいない。
- 他動詞loveをもとに作られた不定詞to loveが、目的語himを取っている。修飾される名詞familyと不定詞句のあいだにSV関係が成り立っている。
- Lisa is the last person to be late for school.
- = Lisa is the last person who is late for school.
- リサは決して学校に遅刻したりしない。
- be動詞をもとに作られた不定詞to beが、補語lateを取っている。修飾される名詞personと不定詞句のあいだにSV関係が成り立っている。
- 形容詞lastは、「最も~しそうにない」の意。
- The mind is not a vessel to be filled, but a fire to be kindled.
- = The mind is not a vessel which should be filled, but a fire which should be kindled.
- 知性とは、満たすべき器ではなく、燃やすべき炎である。
- 修飾される名詞とto不定詞のあいだをb.の関係(修飾される名詞がto不定詞内の前置詞の目的語になる)にして、a vessel to fill / a fire to kindleとも書ける。
- 古代ローマの思想家・プルタルコス(Plutarch)の言葉。
to不定詞を関係副詞節に書き換えることができる †
- timeやwayなどの名詞を修飾するto不定詞は、関係副詞節に書き換えることができる。
- It's time to go to school now.
- = It's time you went to school now.
- もう学校に行く時間ですよ。
- This is the only way to cure the disease.
- = This is the only way you can cure the disease.
不定詞が修飾される語の内容を補足的に説明する †
- My parents gave me the opportunity to study abroad.
- You have the right to remain silent.
- あなたには黙秘する権利があります。
- アメリカでは、拘束した被疑者に取調べを行うにあたり、事前に被疑者の持つ権利を法執行官(警官や刑事など)が読み上げる。これはミランダ警告(Miranda warning)と呼ばれ、例文(黙秘権について)はその最初の項目である。
これらの例文では、修飾される名詞とto不定詞のあいだに同格関係が成立しているとも考えられる。その場合、to不定詞の用法は名詞用法となるが、どちらが正しい(あるいは間違っている)かを議論することは無益である。to不定詞の中には名詞用法/形容詞用法/副詞用法のどれかに厳密に分類することが難しいものがあり、この用法もそれにあたる。
叙述用法 †
to不定詞が不完全自動詞の補語として働く用法を叙述用法と呼ぶ。ただし、固定した表現がほとんどであり、この分類そのものにあまり意味は無い。<動詞+to不定詞>全体で助動詞的に働くと考えてもよい。
seem / appear to~:~のように思われる †
- He seems (to be) sick.
- = It seems that he is sick.
I cannot seem to find any solution to this error.
happen / chance to~:偶然~する †
- I happen to be free today.
- = It happens that I'm free today.
- There happened to be my old friend in our rival firm.
- Cathy chanced to meet her ex-husband on the street.
- キャシーは街で図らずも前夫に出会った。
- chanceは文語的とされ、普通はhappenを用いる。
prove / turn out (to be) C:結果的にCであることがわかる †
- Reiko proved to be the right person for the job.
- The experiment turned out (to be) successful.
- その実験は成功した。
- to不定詞内のCが形容詞のときはto beを省略できる。Cが名詞のときは省略しないのが普通とされる。
come (learn) / get to~:~するようになる †
to不定詞には主に状態動詞が用いられる。
- I recently came to know her husband.
- 私は最近になって彼女の夫を知った。
- getを用いてgot to knowとするのは口語的。became to knowは誤り。
- Most Japanese learn to read and write in elementary school.
- ほとんどの日本人は小学校で読み書きができるようになる。
- このlearnは他動詞で、「努力して~できるようになる」の意。
その他 †
remain to~:まだ~されずにいる/これから~されねばならない †
- It remains to be seen if our plan will be successful.
- 我々の計画が成功するかどうか、まだわからない。
- この表現ではto不定詞内は受動態になることが多い。
tend to~:~する傾向にある †
- Overwork tends to lead to sudden death.