他動詞の中には、目的格補語に不定詞を取って<SVO+C(不定詞)>というかたちの第5文型を作るものがある。
Cに入る不定詞の種類はVの動詞によって異なる。また、能動態と受動態でCに入る不定詞の種類が異なる動詞もあるため注意が必要である。
SVO+C(to不定詞) †
SVO+to be C †
- We thought him (to be) responsible.[SVOC]
- 私たちは彼を責任感の強い人だと思っていた。
- be動詞を元に作られた不定詞to beが、形容詞responsibleを補語に取っている。
- that節を用いて、We thought that he was responsible.[SVO]と書き換え可能。
to beを省略できるかどうかは動詞によって異なるが、厳密な区別はないとされる。
<SVO+to be C>の、to beを省略できる主な動詞 †
- assume:Oを~と考える
- believe:Oを~と思う
- consider:Oを~と考える
- find:Oが~とわかる
- suppose:Oを~と思う
- think:Oを~と思う
<SVO+to be C>の、to beを省略しない主な動詞 †
- assert:Oを~と断言する
- conclude:Oを~と断定する
- discover:Oが~と気づく
- guess:Oを~と推測する
- know:Oが~と知っている
- recognize:Oが~と認める
SVO+to do †
一般動詞を元に作られたto不定詞を目的格補語の場所に置いて第5文型(SVOC)を作ることができる。日本語訳のパターンは、「Sは、OがCすること(Cになること)をV」となることが多い。
一般的な<SVO+to不定詞> †
第5文型(SVOC)では、Cの意味上の主語はOになる。<SVO+to不定詞>でも同様に、to不定詞で表される動作や状態の意味上の主語はOになる。
- My teacher always tells me to study English everyday.
- 先生は、私に毎日英語を勉強するようにといつも言う。
- 「毎日英語を勉強する」(C)のは「私」(O)である。
受動態に書き換えると第2文型(SVC)になり、Cの意味上の主語はSになる。
- I am always told to study English everyday by my teacher.[SVC]
- 私は、毎日英語を勉強するようにと先生にいつも言われる。
- 「毎日英語を勉強する」(C)のは「私」(S)である。
tellは、Oをthat節の主語にして、<S tell O1+that節(O2)>に書き換えることができる。
- My teacher always tells me that I should study English everyday.[SVO1O2]
+
| | <SVO+to不定詞>の形を取る主な動詞
|
- advise*:Oに~するよう忠告する
- allow:Oが~することを許す
- cause:OがCする原因になる
- compel:Oに~するよう強いる
- enable:Oが~できるようにする
- encourage:Oが~するよう励ます
- expect**:Oが~すると期待する
- force:Oに~するよう強いる
- need:Oに~してもらう必要がある
- order**:Oに~するよう命令する
- permit:Oが~するのを許可する
- require**:Oに~するよう求める
- teach*:Oに~することを教える
- tell*:Oに~せよと命じる
- think**:Oを~と思う
- want:Oに~してほしいと思う
- warn*:Oに~するよう警告する
- *印は、Oをthat節の主語にして、<SVO+that節>に書き換えることができる。
- **印は、Oをthat節の主語にして、<SV+that節>に書き換えることができる。
|
Oとto不定詞のあいだに受動の関係が成り立つときは、to不定詞を受動態にする。
- I want these suitcases (to be) carried upstairs.
There構文は<There+V+S>という特殊な構造を持つので、there構文を<SVO+to不定詞>で表す場合、thereを名詞に見立てて<SV there to be+S’>の形で表す。
- I don't want there to be another war.
注意すべき<SVO+to不定詞>:promiseとhelp †
他動詞promiseの場合に限り、to不定詞の意味上の主語がOにならず、Sになるので注意が必要である。
- Susan promised me to come back here by seven.
- スーザンは7時までにここに戻ってくると私に約束した。
- 「7時までにここに戻ってくる」のは「私」(O)ではなく「スーザン」(S)。
- 「スーザンは私に7時までにここに戻るという約束を与えた」と考えて、第4文型(SVO1O2)と解釈する考え方もある。
現代英語では、上記のような混乱を避けるためthat節を用いて第3文型(SVO)か第4文型(SVO1O2)で表すのが普通とされる。
- Susan promised (me) that she would come back here by seven.
また、他動詞helpは、Cに原形不定詞とto不定詞の両方を取れる。
- My brother helped me (to) repair my bike.
- 兄は、私が自転車を修理するのを手伝ってくれた。
- 原形不定詞の場合は直接的な助けを意味し、to不定詞の場合は結果として助けになるという解釈もあるが、実際にはあまり区別せず用いられる。
<SVO+to不定詞>が取れそうで取れないhope †
他動詞hopeは、<SVO+to不定詞>の形を取って、<S hope O to不定詞>と書けそうだが、実際には書けない。<SVO+for 意味上の主語+to不定詞>とする必要がある。
- ○ I hope for you to do your best.
- × I hope you to do your best.
hopeは、<for 意味上の主語>をthat節の主語にして、<S hope that節>に書き換えることができる。
- I hope that you will do your best.[SVO]
SVO+C(原形不定詞) †
第5文型(SVOC)において、Vに知覚動詞(get以外)や使役動詞などが置かれると、Cはto不定詞にならず原形不定詞になる。
<S+V(知覚動詞)+O+C(原形不定詞)>の用法 †
知覚動詞とは、身体的知覚を意味する動詞で、「見る」(see / watch)「聞く」(hear)「感じる」(feel)などに代表される。
- I heard Bob play the violin.[SVOC]
- 私は、ボブがバイオリンを弾くのを聞いた。
- 他動詞playを元に作られた原形不定詞play(~を演奏すること)が目的語the violinを取っている。
- 現在分詞を用いてplaying the violinとも書ける。原形不定詞が「一部始終を聞いた」を表すのに対して、現在分詞では「一部を聞いた」というニュアンスになる。
ただし、受動態にするときは原形不定詞をto不定詞に書き直す必要がある。
- Bob was heard to play the violin by me.[SVC]
アメリカ英語では、本来は<自動詞+前置詞>であるlisten toやlook atを一つの他動詞として捉えて知覚動詞として句動詞的に扱い、<SVO+原形不定詞>の形を作ることがある。
- I listened to Bob play the violin.
このようなSVOCから受動態が作られることは無い。
<S+V(使役動詞)+O+C(原形不定詞)>の用法 †
使役動詞とは、「OにCさせる」を表す他動詞を指し、make / have / letなどに代表される。
make:Oに無理やりCさせる †
使役動詞makeは、Oの意志に関わらず無理やり何かをさせるという強制の意味を持つ。
- Father made me go to a swimming class.
受動態にすると原形不定詞をto不定詞に書き直す必要がある。
- I was made to go to a swimming class by Father.
let:OがCすることを許す/OをCのままにしておく †
使役動詞letは、Oに自由に何かをさせるという許可の意味を持つ。
- Kenny let me use his car.
letを用いた受動態は作れないので、allowやpermitなど許可を表す他の他動詞で代用する。その際、原形不定詞はto不定詞に書き換える必要がある。
- I was allowed to use his car by Kenny.
letは命令文で、次のように用いられることも多い。
- Let me introduce you to Mr. Davis.
- Let it be.
- なるがままにさせておこう。
- この例文は、イギリスのロックバンド・The Beatlesの最後のアルバムの名前でもある。同名のシングル楽曲は全米第1位のヒットを記録した。
勧誘を意味する命令文<Let’s 動詞原形>のLet’sは、<Let+us>の縮約形である。
- Let's (= Let us) take a walk.
have:OにCを(当然のこととして)させる/してもらう †
使役動詞haveは、当然のこととしてOにCをしてもらうという合意の意味を持つ。
- I had a mechanic check the engine.
haveそのものは受動態にならないが、OとCの間に受動関係が成り立てば、Cに過去分詞を置く。haveを用いた受動の意味を表す表現も参照のこと。
- I had the engine checked by a mechanic.
- 私はエンジンを修理工にチェックしてもらった。
- <have+O+過去分詞>は、「OをCしてもらう」(使役)や「OをCされる」(被害)と訳せる。
get:OにCさせる/してもらう †
使役動詞の中で、getだけはCにto不定詞を取るので注意が必要である。getは、努力を伴う使役を意味する。
- I got my husband to quit smoking.
getそのものは受動態にならないが、OとCの間に受動関係が成り立てば、Cに過去分詞を置く。
- I'll get this work done by noon.
[FYI] <SVO+(to)不定詞>に関する主要参考書の見解 †
<SVO+(to)不定詞>を、Mt. English Grammarでは一貫して第5文型(SVOC)として扱っているが、英文法参考書によっては異なる見方をしているものもある。
たとえば『マスター英文法』(中原道喜・聖文新社)では本講座と同じくこの構造をSVOCとして扱っている。『ロイヤル英文法』(綿貫陽他・旺文社)の場合、初版ではこの文構造をSVOCとして扱っていたが、改訂新版では「いろいろな見方があるので、特別な構文として扱う」という表記に変更している。
また、『英文法解説』(江川泰一郎・金子書房)では、promiseのような例外を含むなどの理由からこの文構造を「5文型の学習文法の枠内で処理することは不可能」としている。さらに、この文構造では動詞の目的語をOだけでなく<O+不定詞>として見るべきだという見解に立っている。
変形文法の観点を取り入れた『英文法総覧』(安井稔・開拓社)は、5文型による英文の分類にそもそも消極的である。<SVO+(to)不定詞>については、他動詞の中には<目的語+to不定詞>の構造を従えるものもあるという解説に留めている。
さらに、『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)では、第2版までは<S+tell+O+to不定詞>などを第4文型として扱っていたが、現在(第3版以降)では文型分類を行っていない。
英文構造をどのように解釈するかというのは、極論すれば解説者の思想の表明であり、どれが正しい(あるいは間違っている)と断言できるものではない。本講座の見解は、上記に挙げた解説書の中では『マスター英文法』に最も近いと言えるだろう。